★今日のベビメタ
本日11月21日は、過去BABYMETAL関連で大きなイベントのなかった日DEATH。
例年より約1週間早く、先週11月16日に、年末のNHK紅白歌合戦出場メンバーが発表された。
BABYMETALは、今年もリストになかった。
例年言われていることであるが、出たかったけどオファーがなかったのか、オファーがあったのに辞退したのか、事前に「出場しません」オーラを出していたからオファーされなかったのか、真相のほどはわからない。
アミューズ所属の人気俳優が不祥事を起こし、NHKに多大な損害を与えたので、その“補償”としてBABYMETALは「出たくなくても出なければならない」という説があったが、事実ではなかった。
「BABYMETALの楽園」様サイトのコメント欄を見る限り、今年も事前の意見としては、「出なくてよい」「出ない方がよい」「出るべきではない」が多数派を占めていたように思う。
ぼくのスタンスとしては、NHK紅白歌合戦は戦後の日本文化を象徴する番組なので、BABYMETALには、一度は出て欲しいというもの。お茶の間の爺さん婆さんが孫娘ほどのBABYMETALの「メギツネ」で大喜びする姿を妄想する。
今年の紅組初出場のメンバーは、
丘みどり(演歌歌手)
SHISHAMO(3ピースガールズバンド)
TWICE(韓国の9人組アイドルユニット)
Little Glee Monster(合唱部出身の4人組ボーカルユニット)
の4組。
今年出場するアーティストで、多少なりともBABYMETALに関係のある人たちは、
Perfume(10)同事務所かつASH出身
X-JAPAN(8)オマージュを捧げるメタルバンド
福山雅治(10)同事務所の先輩
星野源(3)同事務所
の4組。
なお、来年引退を表明している安室奈美恵と、朝の連続テレビドラマ「ひよっこ」の主題歌を歌っている桑田佳祐は、出演を渋っており“特別枠”でのオファーを継続しているとのこと。かつて出場したこともあったのに、オファーされてなぜ渋るのか。
NHK紅白歌合戦が、戦後日本の文化を象徴するというのは、出場者や、それを巡っての議論そのものが、その時代の音楽市場を反映しているからである。
まずはポジティブな面から。
現在日本の音楽市場では、「アイドル」ブームに代わって、バンド系が再び盛り上がってきていると思う。それを反映して、今年はバンド形式のアーティストが一定数出場している。
熊本出身の3ピースバンドWANIMAが白組で初出場となったのはちょっと嬉しい。WANIMAは今年のロックインジャパン2日目のメイン会場のオープニングで、ぼくがRichardさんと一緒に観た3ピースのポジティブパンクバンド。
熊本地震の惨禍の中で、「変わらぬ友情」や「挫けない気持ち」を歌い上げるスタイルは、単純だが感動を呼ぶ。RIJ 2017でステージから松林の奥まで数万人のウェイヴが走った光景は伊達ではない。
紅組のSHISHAMO(初)は、神奈川県川崎市の高校軽音部出身の3ピースガールズバンド。やっぱりポジティブパンク〜青春ロック風の楽曲で、2016年には日本武道館公演も成功させ、川崎フロンターレのホームグラウンドで撮影されたドコモCMソング「明日も」は、配信ゴールド認定となっている。「♪良いことばかりじゃないからさ」「ヒーローに自分重ねて明日も」という歌詞が若い世代に共感を呼ぶ。WANIMAと好対照ということになるのだろう。
このほか、昨年のイエモン同様、“ベテランロックバンド枠”なのか、エレファントカシマシ(初)が出るし、SEKAI NO OWARIは4回目。さらにX-JAPANがなんと8回目の出場。バンド系は白組が多いから、紅組としてBABYMETALが出るのは、もはや必然なのではないか。
Little Glee Monster(初)は、サマソニ2017に出ていた。幕張の現場ではSWMRSと重なっていたので観られなかったが、WOWOWで観た。アカペラのカヴァーメドレーと「明日へ」(SHISHAMOの「明日も」と1字違い)だった。粗削りだがピッチの正確なボーカルユニット。阿佐ヶ谷姉妹じゃなかった、由紀さおり姉妹と同じ“歌唱力枠”か。あるいは、バンド系と同じように“実力派”としての扱いなのか。
オファーを続けているという桑田佳祐はいわずとしれたサザン・オールスターズだし、トータス松本はウルフルズ。ゆず、星野源、竹野ピストル(初)、椎名林檎、西野カナもシンガーソングライター。
ぼくの勝手な見立てに過ぎないが、日本の戦後大衆音楽の流れは、次のようなものだ。
50年代ロカビリー〜60年代GS〜アメリカンポップスと演歌が統合されて70年代の歌謡曲になる。
一方、60年代カレッジフォーク〜70年代ニューミュージックの流れは、80年代アイドル〜Being、小室系の流れとミックスし、かつ演歌とメタルは切り離されて、90年代後半にJ-POPというジャンルに統合された。。
2000年代、そこからモー娘。AKB48の登場とともに「アイドルグループ」というジャンルが分化し、さらにK-POPやExileの登場でダンスポップが分化し、自作自演系はようやく数年前のギター女子から現在のロックバンド形式へと再び分化しているように思う。
今年の紅白歌合戦は、バンド系が目立つと共に、アイドル系も健在で、AKB系は、AKB48、乃木坂46、欅坂46の3組、ジャニーズ系は司会の二宮和也が所属する嵐、関ジャニ∞、Sexy Zone、TOKIO、Hey! Say! JUMP(初)の5組が出場する。昨年出たKinki Kids、V6は出ない。
ダンスポップ系は、Exile Tribe(LDH)が三代目J-Soul BrothersとE-Girls。
韓国のTwice(初)が日本の紅白歌合戦に出るが、メンバーには三人の日本人(一人は米国生まれ)と台湾人が含まれ、日本デビューのベストアルバム「Twice」、1stシングル「One More Time」ともプラチナディスク認定されているので、選ばれても不思議ではない。
もっとも韓国アーティストを出すのは、NHK流の「多様性」の象徴なのかもしれない。
アメリカンポップス、ジャズ系の“実力派”シンガーとしては、平井堅、高橋真梨子、AI、Superfly、倉木麻衣、70年代御三家の郷ひろみ、80年代アイドルの代表、松田聖子もここに入るのかな。
演歌系が減ったとはいうものの、五木ひろし、氷川きよし、石川さゆり、坂本冬美といった大御所から、初出場の丘みどりまで取りそろえた。
つまり、旧歌謡曲、アイドル、ダンスポップ、ニューミュージック系(シンガーソングライター+バンド形式)、実力派、演歌という一通りのラインナップはおさえているのである。
あとはジャンルの中での人選であり、〇〇というアーティストが出る/出ないは、本人やファンや業界関係者の中で、それこそ70年代から議論になってきた。だから悲喜こもごもでよいのである。
とりあえず、BABYMETALは今年も出ない。
昨年は2ndアルバム「Metal Resistance」の53年ぶりビルボードトップ40、東京ドーム11万人という話題性があったが、今年は「マスコミ的には」何もなかった。だから「まあ、そうでしょうね」という感じ。逆にホッとしているという方もいると思う。
2015年までのようにカウントダウンジャパンにも出演予定がないので、メンバーにとっても、メイトにとっては、年末、お仕事でない限り、ゆっくりできるわけである。
少なくとも、一部の演歌歌手やアイドルのように「紅白に出ることが目標」ではないから、出なくても別にどうってことはない。
ただ、例年のことながら、モヤモヤは残る。
ワンオクのTaka兄さんは、過去ラジオで「俺、紅白には出たくない」と明言しているそうだが、BABYMETALは、メンバーの誰もそのような発言はしていないし、メジャーデビューの2013年にはバラエティ番組にも出ていた。2016年も4月のMステには出た。
出たいけどオファーがないということなら、イエモンやエレカシのように、オファーがあれば出ますよ、というスタンスなのだから、応援し続ければいい。一度は出たが、ある年から呼ばれなくなったということなら、ももクロのように「紅白卒業」を宣言すればいい。
「出られるだけの人気、実力、話題性があるのに呼ばれない」のではなく、「呼ばれないのは、人気、実力、話題性がないからだ」という風に見られるのが厭なのだ。
だからいろいろなリクツをつけてみる。
例えば、単独ライブはアミューズが独自に差配できるが、フェス参加に関しては、海外プロモーターがコントロールする「価格」があって、1ステージ3000万円ともいわれる出演料をクリアできないと、出たくても出られないのだという説。
だから、2017年のBABYMETALは、海外も含めてサマソニ以外のフェスにも、地上波テレビにも出演しなかった。上海サマソニは「莫大な金額のオファーがあった」というが、日程調整ができず出演しなかった。NHK紅白歌合戦もいわばフェスだし、出演料はNHKの規定通りの額しか保証されないから出られないというのである。
あるいは、今年2017年は「モリカケ」報道をはじめ、テレビや大新聞による“安倍憎し”の「偏向報道」に対するネット民の不信感が増大した年であり、NHKも例外ではない。
BABYMETALは2014年に稲田朋美元防衛大臣、元クールジャパン担当大臣と会っているし、水野由結と菊地最愛は、同年、さくら学院として安倍首相の「桜を観る会」に招かれ、2016年には、山本一太参議院議員が東京ドーム公演に参戦して公式ブログで、絶賛しているから、NHKは何が何でもベビメタを出したくないのだという説。
さらには、そんなNHKはすでに公正不偏の公共放送であることをやめ、秋元康や電通など音楽業界の黒幕たちに支配されているから、“巨大勢力アイドル”に戦いを挑むBABYMETALの「敵」なのだという「紙芝居」に準じた解釈まである。
インターネット時代となって、情報を独占・編集し、大衆を操作してきたテレビや大新聞、いわゆるマスコミの公共性への信頼が揺らいでいるのは間違いない。
NHKが恣意的に「今の音楽の代表」を決めるというやり方には、当然反論しうるし、実際、「NHKには出ない」と宣言しているアーティストも多い。
さらにすでにお茶の間でテレビを見るという習慣自体を持たない世代が多数派となり、ぼくらのような中年でも、テレビを見ないという方が増えた。
マスコミが公共性を取り戻すには、過去に報じた番組や記事を、最新の歴史研究によって検証し、誤報があれば訂正番組や記事を作るといった真摯な経営姿勢しかない。
ネットならば、「記録」として残したうえで訂正し、再アップすることができる。その過程も検証できる。
だが、テレビは放送したら終わり、新聞も発行したら終わり。その結果視聴率をとってナンボ、売れてナンボだから、そんなことはしない。
したがって、ぼくら視聴者側が、テレビ、新聞、雑誌というマスコミは、「原理的に」無謬性・公正性が担保されないメディアであると定義し直し、ネットリテラシーだけでなく、マスメディアリテラシーを磨くことが唯一の解決策だろう。
だが、そうなっても、一方的に情報を編集して流すメディアの影響力は残る。
ぼく自身も含めて、テレビで連日流れているニュースをつい信じてしまいがちだし、キャンペーンで繰り返し流れるアーティストの曲は、「売れているんだな」と思ってしまう。
こういうことができる事業者の利権が、まずもって問題なのだ。
特に日本ではテレビ局と大新聞社の経営が一元化されているといういわゆるクロスオーナーシップの問題がある。
マルクス主義の文脈とは別に、近代社会の「公共性」の問題に焦点を当てて研究したのが、ドイツの社会学者、ユルゲン・ハーバーマスであった。
(つづく)